第1回 歴史街道推進協議会

2012 年 8 月 16 日


第1回目の各地の観光まちづくりプラットフォーム実践事例は、歴史をキーワードに関西で広域連携事業に取り組むプラットフォーム「歴史街道推進協議会」です。
同推進協議会の事務局でPF推進機構の井戸智樹常務理事が紹介します。




地域の概況およびプラットフォーム(DMO)が出てきた背景


組織結成の発端は、関西にある、日本の歴史の重要な舞台をほぼ歴史の年代順に21カ所つないで「歴史街道」と呼ぼうという堺屋太一さんのアイデアです。1986年に研究会が始まり、5年後の91年に「歴史街道」推進協議会を設立しました。


当時は資金も人材も乏しく、唯一のスタッフ=私といった状態でのスタートでした。以来、少しずつ組織体制を整え、また広域組織としてできそうな事業を1つずつ実現していき、今日に至っています。


現在のメンバーは関西の経済界(130の民間企業、経済団体等)、8府県(福井・三重含む)、伊勢・飛鳥・奈良・京都・大阪・神戸(この6地域を結ぶのが堺屋アイデア)など60の歴史的市町村、それに3000名の個人会員からなります。事務局のスタッフは12名(プロパー5、企業出向7)。年間予算は最盛期2.5億円ほどありましたが、ここ2、3年は1億円前後で、少々しんどい感じになってきています。




「歴史街道」推進協議会のコンセプト、活動内容


事業分野は大きく3つあります。
①歴史文化を活かした地域の活性化、②知的な観光の振興、③日本文化の積極的な海外発信です。①の看板事業は「歴史街道モデル整備」という歴史資源周辺整備(50地区:図1)、②はテレビ番組(NHKと朝日放送で約4000回)、③は阪神淡路大震災を機に、海外でのイベントを、関西国際空港便を持つ約50の海外都市で実施してきました。

(図1)

年間数個ずつ新しいチャレンジを繰り返し、「広域組織ならでは」の中小事業が40種類ほど実現しています。


「広域組織ならでは」と申し上げたのは、広域組織がやるべき事業は基本的に次の3つのパターンであると考えるからです。


A:スケールメリット型
B:役割分担型
C:ノウハウ交流型


Aの典型例は外部へのPR活動です。Bは、例えば、シーズン中20地域程度の語り部組織が連携して定時定点案内を行い、我々がその告知資料を作り、鉄道会社がそれを車内などに無料掲載するといった事業です。Cは、「他でもやっている」ことを知ることで各組織内であまり前向きでない人々の背中を押し、彼らを積極化していくという点で効果的です。また、ここでは成功事例以上に、いわゆる失敗体験や課題解決途上の事項を共有化することも大切になります。




将来ビジョン
関西の広域観光戦略の再構築


私自身は5年ほど前に事務局長を退きました。以降、土地勘+それなりのノウハウ+これまで得た信用といった資産を活用して、仕事人生の多くをかけて取り組んできたことを何らかの形で次世代に繋がるようなものにしていきたいと、次のことに取り組んでいます。


第1に、関西の広域観光戦略の再構築です。関西を大きく南北3つに分けて、ターゲットを明確にした上で、各種の共同事業を推進していくことを試行的に行っています。


関西を南北3分割した際の南部=紀伊半島。日本人の精神文化を表現するという意味でもとても重要な世界遺産です。初期のターゲットは全国の「歴史ファン」、「パワースポットファン」など。一見複雑なエリアですが、実はその入口は名古屋・大阪・奈良の3つ(白浜空港利用者を加えれば4つ)しかありません。情報の出し方次第では、温泉地の周遊による中長期滞在エリアに化けていく可能性もあると思っています。


関西の中央部は、大都市と世界遺産が混在するエリアです。ここは、関西国際空港を中心に、より積極的に世界に売っていきたい。世界遺産の暫定リスト段階の2カ所を加えれば、「百舌鳥・古市古墳群―飛鳥―法隆寺―奈良―京都・大津・宇治―(大阪・神戸=京都とともに宿泊拠点)-姫路」という「オール世界遺産の時系列コース」の形成が可能です(図2)。


北部の北近畿ブロックは逆に、歴史にこだわらず、琵琶湖や世界ジオパークに指定された山陰海岸、そして様々な体験メニューなどを交え、まずは京阪神にもっとアピールしていくのが基本戦略だと考えています。

(図2)




全国の世界文化遺産地の連携


第2に、全国の世界文化遺産地域の連携に取り組んできました。
昨年6月に「世界文化遺産」地域連携会議www.worldheritagejpn.com/ という組織が発足し、そのお世話役を務めています。


一見勝ち組にみえる世界遺産指定地ですが、実際には諸々問題が山積しています。
意外に思われるかもしれませんが、世界遺産には特に国内法上の位置づけや優遇措置はありません。最大の問題は、防災に関する十分な手立てすらなされていない点です。木造建築が多い京都でもし大火災が起こったら? 宮島に津波が来たら? 原爆ドームの地震耐久性は? など最悪のケースへの備えはもちろん、農山漁村部の遺産が地元高齢者の善意に頼った型でしか維持できていない点等々、「人類の遺産」と言われつつ、実は数百年先の存続ですら、かなり心もとない状況にあるのです。


もう一方の問題は、省庁間の連携の悪さです。例えば歴史資源周辺の景観形成などに関し、新しく「歴史まちづくり法」ができましたが、世界文化遺産関係地12カ所中で採択されているのはわずか1カ所(京都)。観光庁における世界遺産予算も、基本的にはゼロです。


もちろん日本には世界遺産以外にも、環境庁が所管する国立公園や東京・福岡などの都市魅力等、世界に通用するディスティネーションがいくつもあります。世界に誇る新幹線網を使えば、それらを結んでいくことは簡単なことです。世界遺産なら関西の5つや広島・宮島はもちろん、日光=東京日帰り圏、平泉=一関から30分、白川郷=金沢から1時間で訪問可能です。


「世界文化遺産」地域連携会議ではそうした課題に対して、相互のノウハウに学びながら、例えば共同で海外PRや観光ゴミの持ち帰り運動ができないかとか、イタリアで制定された「世界遺産特別法」の日本版を皆で研究してみようといったことを話し合っています。

「世界文化遺産」地域連携会議発足会

 



課題および今後の展望


近年、「観光地域づくりプラットフォーム」、DMOが大きく意識されるようになってきた背景には、これからの観光に関わる3つの変化があると思っています。


1つは(私たちの組織がまさにそうですが)観光協会など含めた既存組織が大胆な変身・変革なしに生き残れない時代を迎えつつあること。


2つ目は旅行者やエージェントの側から見た場合、いわゆる「発地型観光」に大きな限界が見え始めていること。


3つ目は、国や地域から見た場合の地方経済、あるいは雇用促進の必要性。


この3つの輪の中央の交わりの部分で議論され始めたのが、観光地域づくりプラットフォームであり、DMOだと思うのです。


まず、1つ目の点について。
私たちは、関西全体を戦略的に活性化させたいと動いてきました。規模だけを見れば、日本最大のプラットフォームと言えるかもしれません。しかし、「会費や寄付金や補助金を集め、それを皆に分配する」という収支構造は、従来の観光協会同様、明らかに厳しくなってきています。


資金不足→実績減少→信用低下→さらなる資金不足→さらなる実績減少→……という「負のスパイラル」が発生すれば、早晩、この種の組織からは未来が失われます。


観光協会に関しては、大阪や京都のような着地型財源(大阪城の入場料、祇園祭の升席)を有していた組織を別格とすれば、大多数は補助金減少の中で、イベントなどの発注仕事をこなすだけで精一杯の状況でしょう。


新陳代謝の低さや老害も、多くに共通する問題です。特に歴史的地域には「50歳鼻たれ小僧」的文化がまだあります。古希の事務局長がひたすら傘寿のトップのご機嫌だけを取っている、そんな笑えない組織も実際にあります。


しかし、関西でも「田辺市熊野ツーリズムビューロー」http://www.tb-kumano.jp/ <http://www.tb-kumano.jp/>  のように、若い女性会長の下、旅行業資格を取り、国内だけにとどまらずFIT(海外からの個人旅行客)にも対応したDMO事業にチャレンジするところが出てきました。


それぞれの事情に合わせ、恐らく多くの地域でもこれから、「観光協会自身の変身」「既存観光協会を1メンバーとするプラットフォームづくり」「第二観光協会的組織の出現」のいずれかの方向が模索されていくのだろうと思います。


2つ目の「着地型」への移行についてです。
私たちの組織でもこの間、2~30種類/年のツアーを実施したり、物販を検討するなどいわゆる消費者向けの取り組みをしてきました。しかし、残念ながらそれらはきちんとした収益ベースに乗っているとは言えません。


スタッフの心の中に「(いいことをしているんだから)別に儲けなくていい」という意識が蔓延しているというのもあるでしょう。しかし、もうそのような余裕はありません。まずはもっと積極的に経営していく意識、スピリッツを全国のさまざまな団体から学ばせていただかなければならないと思っています。


最後に雇用の問題。
「地域雇用」については、資源に恵まれている地域ほどすでに全国資本や私鉄グループなどがDMO相当分野の多くを支配していたり、また地域自体が食っていくに困らないところは観光に対する意識も低いといった現実があります。世界遺産関連地の多くがそうです。


そうした意味からも、関西の意識は恐らく全国の地方圏で最低レベルのランクではないでしょうか。


しかし、素質が高い地域が努力すれば、まさに「鬼に金棒」です。そのことはすでに北海道函館市、東京都墨田区、大分県別府市、高知県四万十町などの先達によって証明されているように思います。


関西でも最近は、次のような元気な組織の出現により、少しずつ世代交代が促進され、明るい光が差し込み始めました。

●丹後・但馬の「NPO北近畿みらい」http://k-mirai.net/
●京都の「京都旅企画」http://www.kyoto-tk.com/
●大阪の「インプリージョン」http://corp.impregion.jp/osaka.html
●東紀州の「くまの体験企画」http://kumanokodo.info/


ただ、今のところ、相互の交流はほとんどありません。会の結成後は、ともすれば会員数を追いたくなってしまうものですが、関西の場合は、まずはしっかりした活動をされている方々どうしの繋がりをつくっていくことが先決かもしれないと考えています。




【組織概要】

歴史街道推進協議会
  http://www.rekishikaido.gr.jp/
大阪市北区中之島2-2-2
大阪中之島ビル7F
TEL 06-6223-7744  FAX06-6223-7234


1991年4月1日設立
事務局員数:12名(プロパー5、企業出向者7)
主な事業
●歴史的地域の景観整備
●海外・国内広報
●各種広域連携事業、官民連携事業の実現
●ツアー、講演会
●個人会員組織(歴史街道倶楽部:3,000名)の運営

 

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