第7回 墨田区観光協会

2012 年 11 月 12 日


第7回の各地の観光まちづくりプラットフォーム実践事例は、東京スカイツリーの開業を好機に、町工場、職人、商店街まで巻き込んだ「地域ブランド」、「まち歩き観光コンテンツ」開発に取り組むプラットフォーム「一般社団法人 墨田区観光協会」です。
同観光協会の発起人理事である、PF推進機構の久米 信行理事が紹介します。





地域の概況およびプラットフォーム(DMO)が出てきた背景

 

墨田区では、東京スカイツリーの建設が決まってから、一気に国際観光都市を目指そうという気運が高まりました。もしも何も手を打たなければ、東京スカイツリーと隣接する商業施設だけが繁盛し、浅草やディズニーランドに団体客が流れる恐れがあったからです。地元商工会議所の役員会でも、「商店街や町工場などは潤わず、渋滞やゴミだけが増えるのではないか」と、誰もが危機意識を抱いていました。

そこで、山崎 昇区長の強い意向のもと、墨田区に新しい観光協会の設立が計画されました。折しも、公益法人の組織改革が議論されていた時でもありました。そこで、学識経験者や、地元有力者を交えて、どんな形態の組織が良いか議論され、旧来の墨田区文化観光協会を一新し、一般社団法人墨田区観光協会として生まれ変わることになったのです。

 

 



「墨田区観光協会」のコンセプト、活動内容

 

墨田区観光協会が設立されるにあたって、まず重視されたのは「民間発想を導入」して、「機を見て敏」な組織にすることでした。墨田区長から託された「儲かる観光協会」を実現するために、「事業見直しと新規事業参入」を行い「収益事業の拡大と自立化」が目標とされました。観光の美名のもと、区財政からの補助金を垂れ流しにするのではなく、5年後に補助金をゼロにして経済的に自立することが設立のミッションだったのです。

そこで、3人の発起人理事を、阿部貴明理事長を筆頭に現役の地元中小企業経営者にするといった形で、既に公的活動で実績を上げているブリッジパーソンが抜擢されました。この3人が、墨田区内の様々な見えない垣根を取り払い、官民を結びつけながら自在に活動する牽引役や接着剤となるわけです。



墨田区観光協会理事会構成

 



総勢21名の理事会には、墨田区内の観光の要となる団体や法人のリーダーが招集されました。墨田区観光協会の第一の貢献は、ふだん接点がなかった人たちが、月に1回2時間にわたり車座になって意見を言い合う場ができたことでしょう。キーパーソン同士の本音の意見交換が自然に始まり、いつしか交流と協業が進む土壌がつくられました。



墨田区観光協会組織図

 



墨田区観光協会の業務は4つの課で運営しています。実際に、業務を推進する各課のリーダーは、すべて民間企業出身のスペシャリストです。スタッフの総勢は、墨田区から事業委託を受けている案内所やショップのスタッフも入れて56名です。

 

23年度末現在、墨田区観光協会の会員数は1385。その内訳は、町会・自治会・公益団体236、民間企業・事業者 653、 議員・行政(個人) 139、一般・理事(個人) 357となっています。



墨田区観光協会事業概念図



4つの柱となる事業は、この図の通り、すべて有機的に結びついています。東京スカイツリーばかりに頼ることなく、墨田区の地域資源を徹底的に「掘り起し・磨き上げ・繋ぎ合わせ・発信」するために活動を続けています。

 


1)観光開発(街歩き・マップ・ガイド)

地域資源を生かし、鬼平、忠臣蔵、北斎、相撲部屋ツアー等の「街歩きガイドツアー」の開発をしています。また、本格的な観光歴史書籍の他、地元名店のクーポンを掲載したフリーペーパー「すみだ観光まる得ブック」、スカイツリー周辺マップ、隅田川両岸ガイドマップや、桜めぐり・梅暦など季節に応じたガイドマップも制作しています。

 


2)旅行企画(旅行・ツアー・誘客関連)

旅行業免許第3種を取得し、地元のホテルとも協働して、着地型ツアーを開発・販売しています。スカイツリー見学を核にして、職人・工場見学などの街歩きや、大相撲、新日本フィルのコンサート、向島料亭体験などを組み合わせたユニークなツアーを企画し、特に、修学旅行、研修旅行など団体客受け入れに力を入れています。

 


3)商品・サービス(案内・物販・ブランド事業)

 

観光案内所の運営はもちろん、墨田区の地域ブランド戦略「すみだモダン」とも連動して、地産商品を、東京スカイツリーソラマチ内「すみだまち処」や、江戸東京博物館内ショップで販売する事業を進めています。「東京スカイツリー」の区内事業者に対するライセンス商品の認証手続きや、大人気商品「スカイツリーペーパー」のような地元学生とのコラボ商品の開発もしています。

 


4)広報・メディア開発(広報・メディア開発・フィルムコミッション事業)

 

単なる広報活動に留まらず、フィルムコミッション活動を通じて、東京スカイツリーや路地裏の風景を、内外の映画・テレビ・コマーシャル制作者にプロモーションしています。また、地域の町工場や商店の動画をインターネットで発信するための制作や人財育成事業も行っています。さらに、スマホ等ITを使った街歩き観光の先進地域として、団体研修も受け入れています。

 

墨田区のシティプロモーション事業を高コストパフォーマンスで受託しながら、収益を生む事業も積極的に行うことで、目標通り、5年で補助金ゼロを実現できそうです。

 




将来ビジョン

東京スカイツリー×すみだ北斎美術館で国際観光都市への飛躍を

 


東京スカイツリーの開業は、墨田区の観光地域づくりの起爆剤になりました。そして、平成27年に開館予定の「すみだ北斎美術館」を核とした「ものづくり×ことおこし×ひとづくり」が始まります。北斎プロジェクトは、観光のみならず、地域ブランドを核とした産業振興、教育振興、新住民・新企業誘致に決定的な役割を果たすことになるでしょう。

 

私は、すみだ北斎美術館のネーミングやロゴデザインの審査から、開業準備に参加させていただいております。2012年秋の墨田区報インタビューでも「すみだ北斎美術館を熱望する7つの理由」について、区民に熱烈アピールをいたしました。

 


1)世界の北斎の「生地」にある美術館は、世界的に注目を浴びて「聖地」に


2)プリツカー賞受賞、世界の妹島和世氏設計で「世界のセレブ」が必ず訪問


3)「北斎賞×北斎フェスティバル」で世界の芸術家の応募作品を集めて収蔵展示


4)毎年の「北斎賞」受賞作を地産商品にアレンジして商品化、ロイヤリティー収入で運営


5)「北斎カード&画像」を区内名店巡りで集める企画で、商売繁盛と支援者集めを両立


6)365日の一日館長(スポンサー制)一日学芸員(シニアと学生公募)で集金と集客実現


7)早朝深夜開館と、目の前の公演と公道で朝市夜市を開催して、賑わい空間を合体



すみだ北斎美術館アートフェスティバル



知恵を使えば、美術館も、税金垂れ流しで観客の少ない「箱モノ」にはなりません。地域密着型の連携企画を考えれば、スポンサーや協力者を集めながら、商売繁盛と情操教育にも貢献できるはずです。ここでも、美術館と墨田区観光協会の連携が欠かせません。北斎美術館を核とした、まち歩きツアーの開発と団体向け販売、北斎賞とフェスティバルの運営支援と関連商品開発、映像化とIT化で大きな役割を果たすことでしょう。

 

 



課題および今後の展望

 

現在は、まだ「一度は東京スカイツリーに」と見物に来たお客さまの多くがそのまま墨田区を後にして、一部の方だけが墨田区の「まち歩き観光」をするのが現状です。しかし、スカイツリー人気が永遠に続くわけではありません。誰もが、また墨田区を訪ねたくなる仕組みづくりが重要になります。

 


1)路地裏グルメの名店、迷店、新店の開拓と誘致

 

墨田区は、路地裏の「隠れ名店、面白迷店」の宝庫です。昭和のイメージ色濃い長屋町家を改造した和モダンのカフェ、蕎麦屋、和食屋などが日に日に増えています。また、韓国、タイ、インド、ベトナムなど本場エスニック料理の名店もあふれています。私も、ガイドブックに出ていない路地裏グルメを「勝手に観光協会」モードでご案内いたしますが、多くの人が感激して、リピーター化してくれるのです。こうしたロードサイドやエキナカのチェーン店にない、路地裏や商店街の「個店」の魅力を徹底発掘して、情報発信することが重要になるでしょう。

 


2)工房×町工場×アンテナショップ見学ツアーの造成

 

墨田区の魅力は、いまだに「ものづくり」の現場があることです。伝統工芸の工房から、靴、石鹸、ノート、消しゴム工場まで、実際に工場見学をツアーに組み込めることが強みです。さらに区外に工場がある企業でも、ギャラリーやアンテナショップを作るところが増えており、製造直売に加え、ワークショップ体験ができるようになりました。こうした楽しい「社会科見学」ツアーを、修学旅行はもちろん、大人向けにも造成することが重要でしょう。

 


3)地域イベント開催のNPO・民間企業との連携、支援

 

近年、墨田区では、役所発でも観光協会発でもない自主運営イベントが盛況です。「すみだストリートジャズフェスティバル」、「すみだものコト市」、「すみだ日本の酒と技めぐり」、など、まさに「ヨソモノ・ワカモノ・バカモノ」が主役となったイベントが、公的部門では思いつかない斬新で大胆なアイディアで開催されています。何もかも観光協会がイベントを開催するのではなく、イベントコミッションのような役割で、区役所や、理事企業との折衝や協力要請をすることで、「小さな観光協会」が「大きな役割」を果たすことができると考えています。

 


4)全国各地の酒蔵やアンテナショップと連携

 

墨田区に和菓子の名店は多いのですが、農業、漁業、酒蔵など「食のサプライヤー」がいません。それを逆手に取って、地元のしがらみなしに、日本中の「食の名人」と連携することができます。既に、日本中の酒蔵や、四万十の鮎など名産品のイベント販売も実現しております。これをさらに拡げて、「目黒のさんま」ならぬ「墨田のカツオ」など、区内の各所で週代わりで「全国名産品市」が開かれるようにしたいのです。墨田区が、全国うまいものショーケースになれば、各地への誘客にも貢献できるでしょう。

 


5)観光キーパーソンとリピート顧客全員でソーシャルメディア発信

デジタルハリウッド大学院など外部パートナーと共に「スマホでまち歩き観光」を開発、「TOKYO DOWNTOWN COOLプロジェクト」で区内企業の動画制作と発信を進め、区役所・観光協会幹部から地元経営者の多くがソーシャルメディアでの発信を欠かさない、そんな観光ITの先進的な取組みをさらに加速します。今後は、イベントに参加してくださるファンのみなさまの顧客データベースを充実させると共に、観光協会、会員企業、ファンのみなさまが一体になって、FacebookやTwitter等で発信、交流ができる体制を強化します。

 

こうした努力を通じて、5年後には、墨田区の週代わり「まち歩き観光」を年に何度も楽しむリピーターが増やします。そして、きっと、墨田区で新しい店を開きたい、子育てをしたい、老後を過ごしたいという新しい住民も増えるだろうと考えています。

 

 



【組織概要】

 

一般社団法人 墨田区観光協会

http://visit-sumida.jp/

〒130-0001 東京都墨田区吾妻橋3-4-5

TEL:03-5608-6951/FAX:03-5608-7130

 

2009年設立

スタッフ数:56名(常勤20名、非常勤12名、臨時24名)

 

主な事業

●観光開発(街歩き・マップ・ガイド)

●旅行企画(旅行・ツアー・誘客関連)

●商品・サービス(案内・物販・ブランド事業)

●広報・メディア開発(広報・メディア開発・フィルムコミッション事業)

 

 

こんにちは ゲスト さん

ID とパスワードが正しくありません。
ID
PASS
全国地域オペレーター創造ネットワークとは?
全国地域オペレーター創造ネットワーク

「観光地域づくりプラットフォーム」をはじめ、補助金依存からの脱皮に挑戦する「観光協会」など、観光地域づくりの中核組織の発展をとおして、わが国の観光による地域活性化に寄与することを目的とします。(詳細はこちら)



地域会員としてご登録ください。
会員登録

観光地域づくりプラットフォーム推進機構の会員としてご登録ください。中央省庁の施策やそれにともなう補助金情報、および観光マーケティングやブランドマネジメント・地域資源活用といった経営に役立つ情報をご提供します。また会員間での情報交換を促進し、各地での先進的な取り組みや成功事例などもご紹介します。なお、会員登録をされた場合はメルマガ登録は不要です。

賛同者としてご登録ください。
メルマガ

観光地域づくりに役立つ各種情報をお届けします。

メルマガ登録はこちら