第9回 有限会社 京都旅企画

2013 年 1 月 31 日


(有)京都旅企画は、2000年、京都市地域プラットフォーム事業で産学公連携事業の中で財団法人大学コンソーシアム京都主催の「京都起業家学校」で「目先の利益よりも地域貢献」を学んだ滑田教夫さん(京都起業家学校第1期生)が立ち上げたベンチャー企業です。地域素材を使ったユニークで教育効果の高い教育旅行商品が注目を集め、今では多様な顧客に向けた京都らしさを存分に活かした数多くの着地型商品を、常にユーザー視点で企画し、コーディネート。同社のプログラムへの参加者は2012年度で年間43,000人を突破しました。地域内外の異業種や他団体との協働も進み、地域の新しいプラットフォームになりつつある同社を、社長の滑田さんが紹介します。




地域の概況とプラットフォーム(DMO)の動きが出てきた背景


20数年間、私は京都・祇園の旅館の支配人を務めていました。

その時、「祇園は全国でも著名な場所だが、観光客が避けて通る場所でもある」という話を聞いたのです。「一見さんお断り」のイメージが強く、冷たい街だと思われているということでした。

 

当時、四条通から南は整備されて観光のルートになりつつありました。

しかし、私たちの旅館がある北側は人通りが少なくなってきており、日頃から私自身は街が壊れていくような危機感を持っていました。 街の少なからずの方々も共通の思いでしたが、 そのことをなかなか表に出せない状況でした。

 

そこでまず、「ウェルカムの意思表示」をするために、「歩いておくれやす 祇園マップ」を作ってみることにしました。

 

また、宿泊客限定でしたが、 午後4時~6時の2時間、 近くの祇園界隈の案内を始めました。案内する店舗は老舗ばかりで、その商品がどれだけ美味しいもので、どれだけの歴史や苦労を経たものかを、私たちはよく知っています。ですが、 お客さまはそうではありません。

 

店を「見せる」だけではわかりません。しかし、「試食をさせて」というと店も嫌がります。

そこで、予め「1つだけ分けてちょうだい」とお願いしておくといった工夫もしました。

 

そうした活動を通して、京都をより魅力ある観光地にするためには、いわゆる「仲介役」の役割が不可欠であると気づきました。

 

また、1期生として学んだ「京都起業家学校」で「目先の収益よりも地域に貢献しなければいけない」と教えられ、「京のまちづくりを考えた新たな切り口で旅の企画を発信したい」と思い立ち、会社を設立しました。

 

 



組織のコンセプト


1 日本の、京都の伝統文化を広く伝えたいと思います。


2 旅行会社ではなくプランを作り、運営管理する会社。「旅のコーディネーター」でありたいと思います。


3 見るだけの観光ではなく、体験し、地元の人と「ふれあう」観光を推進したいと思います。体験型の商品は、それに関わる様々な人の生きざまを繋ぐものでもあるとも思っています。

 


商品づくりで気をつけている点は以下の3つです。


1 観光素材を細分化し、非日常的な体験とそれによる感動を1つの物語をもって提供する。

→ほんまもん体験といえども、面白くなければ商品にはならない。

 

2 ターゲットをきちんと設定する。

→それがなければ単なるアイデアどまり。

 

3 十分に時間をかけて企画を練る(他社との差別化)。

→出発点が間違っていると時間をかけても無駄になる。




活動内容


次のようなオリジナルの体験メニューがあります。

 


≪伝統産業≫

●花かんざし

つまみ細工でかんざし・ブローチを作る。

●友禅染(型友禅)

エコバッグ・タンブラーに型友禅の技法で絵付けする。

●紋章工芸

小さなうちわに家紋を描き入れ、竹に挿して飾りを作る

など

 

≪伝統文化≫

●出張茶道

宿泊施設で茶道を体験する(イス会場でも可能)

●「一見さんお断り お茶屋さん」 舞妓プラン (一般のお客様用舞妓プラン)

祇園の「お茶屋さん」で舞妓さんと遊ぶ


「一見さんお断り」のお茶屋プログラム。置屋で舞妓の京舞とお座敷遊びが体験できる。



●舞妓観賞(教育旅行様用 舞妓プラン)

京舞を観賞し、質問をしたり、写真を撮ったり、舞妓さんとのふれあいの時間を過ごす

など


舞妓観賞。教育旅行でのニーズが高まっている。

 


≪職場体験≫

●寿司握り体験

寿司職人から学ぶ体験教室

●手描友禅染・金彩友禅染

伝統工芸士から学ぶ

●真田紐

真田幸村由来の紐でブレスレットを作る

など


伝統産業 真田紐の体験。戦国武将が先祖の職人さんから武士の話や千利休の話を聞きながら、作品を作る。

 


≪その他≫

●達人のお話

さまざまな業種の達人による講演

●国際交流と語学研修

留学生と一緒に京都観光をする

●食育講座

食育について講義を受け実習する

など


京都大学授業体験。早期人材育成の重要性に共感した講師陣とで実現。大学生と共にキャンパス見学も。

 


※京都旅企画の体験メニューの詳細↓

http://www.kyoto-tk.com/index.php

 


価格は「1人○円・○人以上」の場合と「セット」で売る場合の2通りです。

たとえば、和服のイケメン男性(or美人女性)が案内人となる「祇園案内人」は1.5時間で、お1人様840円、ただし10名以上で……という設定。「舞妓さんと歩く祇園」(相談を持ちかけた時は置屋のおかみさんから「えー?歩くんどすか??」と言われましたけど…笑)なら、1.5時間で63,000円。

40~50人の団体でご利用いただければお1人当たり約1,500円程度です。


着物姿で祇園限定で案内。地元人ならではの「見る」、「買う」、「食べる」の案内が人気を呼んでいる。




将来ビジョン


今後もさまざまな素材の発掘や「新しい旅」の提案に取り組みたいと思っています。

 

これまでの京都観光は、添乗員がいて『みなさん、ついてきてください』式の旅行が主流でした。しかし、近年はニーズが多様化し、“泊食分離”も進んでほとんどの人が「自分だけの旅」を求めています。

 

言い換えれば、観光客を集団で移動させるだけではなく、1人1人の要望を汲み取ったサービスを提供していく必要があります。

 

旅の喜びを一事で言い表すなら、自分の五感でその地の雰囲気や風土を感じてみたり、さまざまな人と出会い、それまでにしたことのない体験をしてみるということでしょう。

 

京都にはまだまだ多くの隠れた素材があります。

たとえば、中高校生の修学旅行向けの京野菜生産農家体験なら、「京野菜がどのような空気のなかで、実際にどのような苦労があって作られているのか」、「その野菜はどんな味がするのか」を、子どもたちに身をもって知ってもらうことで、京都の風土の理解につながると思います。

また、農家の人と出会い、ささやかではあってもその作業を体験することは、多くの子どもたちにとって、一生モノの経験となるはずです。

 

京都観光といえば寺社仏閣ばかりを思い描きがちですが、文化の深さや産業的な広がりにも事欠きません。体験をもとにした産業の観光事業ができれば、観光客が自分なりの発見や感動を得られるだけでなく産業にとってもメリットが出てきます。

地元や農家の人から見れば、農業体験も京野菜のファンづくりにつながります。

 

農業だけにとどまらず、残飯処理1つとっても、リサイクルや環境を考えるきっかけになりますし、リサイクルをする際に酸性度を調べる必要が出てきたら、京都にはその測定機器を製造する会社もあります。

 

京都の魅力は、まさにそうした多様性の中にこそあると考えています。

 

 



京都旅企画と行政との関係


行政とは、いい協力関係にあります。

委員会への出席やアドバイス、講演会の依頼を始め、時には行政の事業を請け負うこともあります。

現在、京都市の南北にある宇治市・八幡市・京田辺市広域観光連携研究会・南丹地域の京都丹波・食と森の交流協議会などを地元行政と共に進めています。

 

京都以外の地域からも依頼されることもあり、たとえば東京のスカイツリー周辺地域などにも、着地型メニューなどをアドバイスしています。

 

また、ある公共施設のコンサルタントや受付業務などを請け負ったりもしています。

 

 



組織の抱える課題と今後の展望


1 コーディネ-ト人材の確保、育成


京都という地域における伝統を基盤にした商(あきない)が、ある意味「一見さんには難しい」ものであることは確かでしょう。

 

組織としては、体験メニューを提供してくださる多くの方々との信用や人的つながりを、将来にわたってどう発展させていけるかが重要課題です。

その点を意識して、最近は特に新人(観光系を学んできた若者)の採用・育成に注力してきました。

今では彼らに現場を任せられるようになってきました。

また、需要の多いメニューの場合、準備部分の多くを現地のスタッフが手伝ってくださるところが増えてきています。

 

旅の中味は、コーディネーターの存在や個性によって大きく変わります。

京都だけでなく、世界遺産を持つ全国の地域など、各地でそうしたコーディネーター育成のお手伝いができないものかとも考えます。

各地にコーディネーターが育ち、ガイドさんなども含めたネットワークができていけば、地域のまちづくりはもちろん、観光立国推進にも一定の貢献になるのではないでしょうか?

 


2 新しい旅の提案とベンチャー支援


絶えず新しい企画にトライしていかなければならないことが、事業面での課題です。

京都の修学旅行はどちらかと言えば「現状をどう守るか」というビジネスに見えますが、たとえば先日、早期人材育成の必要性に共感頂けた京都大学の先生方と研究会を立ち上げて「京大の授業体験」を実施したところ、生徒はもちろん先生方からも大変好評でした。

お客さまの立場に立てば、まだまだ新しく開発できる分野がたくさんあります。

 

一方で、付加価値の高いツアーづくりがこれからの大事なテーマです。

たとえば、石清水八幡宮を持ち、「松花堂」弁当の発祥地でもある八幡市では、農業体験の後、石清水八幡宮の神楽殿で薪能や雅楽を堪能し、最後に(松花堂庭園の中にある)農作業で扱った野菜を「吉兆松花堂店」で出してもらう、といったツアーを企画中です。

また、宇治市では、世界遺産の見学だけでなく、舟で食事を取り、舞台舟で能楽・雅楽の演奏を楽しむ平安貴族の様に贅沢な「癒し」の企画を提案してみたいと思っています。

 

「旅」や「農」(食)をテーマにしたベンチャー支援もやってみたいことの1つです。「和食」が世界の無形文化遺産になれば、こうした動きが大きく注目されることになっていくかもしれません。

たとえば南丹地域では、京野菜を自ら作り、民宿を営み旅人を受け入れ、さらに都会で農家レストランを経営する若い人たちが出てきています。

 

農業の6次産業化と観光を組み合わせることで都市農村交流が活発になるようなグリーンツーリズムを目指していきたいと考えています。

 



【組織概要】

有限会社 京都旅企画

京都市西京区川島北裏町74

TEL 075-394-4551

FAX 075-394-4552

URL http://www.kyoto-tk.com/

 

2001年6月設立

事務局員数:8名(3名:家族+新人2名+アルバイト3名)

 

主な事業

●京都およびその周辺の着地型メニューの企画・販売、進行管理

●京都周辺を中心とした埋もれた観光素材の掘り起こし

 

 

 

 

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