第10回 信州諏訪温泉泊覧会ズーラ実行委員会

2013 年 3 月 5 日


第10回は、「信州諏訪温泉泊覧会ズーラ実行委員会」です。
ズーラとは、諏訪地方の方言の「そうでしょ、いいでしょ」を意味する「ほうずら、いいずら」の響きからとった名称。大分県別府で始まったオンパク(温泉泊覧会)の仕組みを導入し、着地型商品づくりを通して地域住民、観光行政、観光業界をつなぎ、地域が面として活力を持つために、日夜、行政マンの中堅クラスと民間人が実働部隊として奔走しています。この、民の機動力と官の信頼性の持った、半官半民の広域の観光地域づくりプラットフォーム(観光PF)を、実行委員会スタッフの北澤勝己さんが紹介します。





地域の概況とプラットフォーム(DMO)の動きが出てきた背景


東洋のスイスと呼ばれてきた諏訪地域は、精密機械工業などの製造業によって地域経済が支えられてきました。宿泊施設は、自主的な営業を行わずとも、地元や企業がビジネスで利用する機会も多く、十分に経営が成り立っていました。


しかし、バブル経済の破綻によって企業の衰退が始まりました。


観光客を「数」だけで見れば大きな変化がなかったものの、実際には、観光客1人あたりの消費額が減り、宿泊業、飲食業経営は打撃を受けました。諏訪地域は、旅の「通過点」になってしまったのです。


我々の中には、「このままでは、じり貧だ。目的観光地にならなければ」との強い危機感がありました。が、個々の努力だけでは限界があることも感じていました。


それまでの諏訪地域の観光振興は、各種団体がそれぞれに誘致活動を行ってきており、その活動はバラバラかつ単年度であり、必ずしも計画的・組織的に行われてはいませんでした。効果もいま1つ、上がっているとは言えない状況でした。


大きく動き出したきっかけは、「観光をわかっている行政マンが少ない!」という、上諏訪温泉ホテル「浜の湯」総支配人(大手旅行会社出身)からの一言でした。


業界、行政の枠を超えたさまざまな立場の違う人たちが集まって話し合い、同じ目的・目標に向けて活動する「実戦部隊」を組織すべく、実行委員会を組織しました。スタッフは、30代後半~40代前半の行政の中堅クラス+民間人です。


我々が注目したのが、大分県別府市で成功を収めている温泉泊覧会(オンパク)イベントでした。

オンパクの小(小規模で気軽にできて失敗も少ない)、集(地域の中小事業者がつくった着地型商品を一堂に集める)、短(短期間のチャレンジ)で商品をつくり集客交流を行うというコンセプトに、我々でも取り組めるのではないかと考えました。まずはオンパクの手法を使って地域の資源を発掘して、体験プログラムを企画し、実施してみようということになりました。


平成20年、諏訪観光産業活性会議実行委員会が組織され、「第1回信州諏訪温泉泊覧会」(諏訪オンパク)を開催しました。翌年6月末に、正式に「信州諏訪温泉泊覧会ズーラ実行委員会」(ズーラ)が立ち上がりました。


当初は、諏訪市の行政、商工会議所、観光協会、旅館組合が統一して活動を行っていこうと調整していましたが、活動するうちに、行政を超えた拡がりを見せ、その枠は諏訪地域6市町村、さらには周辺自治体も巻き込み、現在では、8つの市町村が連携した組織となっています。





活動内容


第1回諏訪オンパク開催後は、毎年秋(9月半ば~10月半ばの1カ月間)にオンパクを実施、そこから生まれた定番の体験プログラムや人気商品を通年で提供するという2つの方法で商品を販売し、集客しています。


中には、大ヒットとまではいかなくとも、個々に洗練された商品が生まれてきています。たとえば、地元の喫茶店や地元の居酒屋をガイド付きで巡るB級グルメ的なツアー、野菜収穫体験プログラム、地酒とチーズのコラボレーションを楽しむプログラムなどはとても人気があります。


諏訪オンパクを行うことで、メディアも注目してくれ、今では長野県内の着地型プログラム商品といえば「ズーラ」という言うくらい、ブランドに育ってきたなと感じています。


ズーラは、諏訪地域の観光PFとして、この事業に関わる人同志のコミュニケーションの場を提供しており、次々と新たな資源を使ったユニークなコラボレート商品も生まれてきています。


販売や広報面では、地元の観光関係者の協力も得るなど、互いに連携を図っています。

 


ズーラの活動によって、地域に変化も起こりました。


地元の皆さんが、自らの発想によるプログラムが地域づくりや集客交流に役立つことに気づき始めました。行政の場合、観光部署の若手職員が、地域の魅力をユーザー視点で追求した体験プログラムを企画開発できるようになってきましたし、「売る」ことを意識し、商品をどうすれば流通に乗せることができるかを理解する職員が増えてきました。観光に携わる行政マンのレベルは、確実に上がったと思います。



独自開催したワークショップで研鑽を積む諏訪ズーラスタッフ(平成23年9月実施)。


また、観光関係者、特に宿泊事業者の中には、自らオンパク商品を活用して、自社の収益を上げようとする動きも出てきました。





組織のコンセプト


活動のコンセプトは、次の通りです。


①諏訪地域の観光客の滞在化の促進


②①に伴う波及効果、及び諏訪地域の活性化


特に、活動を行う上で資金面の提供を受けている地元観光協会などの観光事業者の皆さんに、具体的かつ経済的な効果を生むことを一番の目的としています。





信州諏訪温泉泊覧会ズーラ実行委員会と行政との関係


ズーラは、組織上は民間ですが、関わるスタッフには行政職員も多く、民間事業者としてのフットワークの良さと行政の信用度を合わせ持つ、半官半民の組織です。


地域を巻き込み、かつ、多くの行政や業界の枠を超えて活動を行っており、また、地域づくりのためのさまざまな活動が相互に連携できるプラットフォーム組織として機能していくためにも、この民間と行政の利点、バランスを今後も上手く保っていきたいと考えています。


活動資金は年間約500万円です。諏訪市からの補助金が約100万円、ズーラ加盟の各観光協会から併せて約300万円を拠出いただいています。その他は自主財源です。


着地型商品は、地域をよりおもしろく見せ、外からのお客さまに喜んでいただく、地域づくりの1つの有効な手段です。しかし、その企画・販売は、必ずしも収益性の高い事業とは言えません。着地型商品の企画・販売収益のみでズーラの活動を続けていくことは、現時点では不可能です。


我々が大事にしているのは、自組織の利益(点)のみを追求するのではなく、行政などの公的機関に一定の理解を得た上で、地域としての収益・波及効果(面)を増大させることです。


確かに、行政本体には、観光事業は本来、民間事業者が深くコミットし、自らの経費で事業を行い、自らが儲かる仕組みを創るものだとの考え方があります。また、税金を支出する以上、最終的には税収の増加として返ってくることを求められます。


それでも、観光振興を「産業」、「まちづくり」、「人づくり」という観点から考えた時、オンパクに代表される仕組みは、ある程度の行政の底支えが必要ではないかと、我々は考えています。





組織の抱える課題と今後の展望


「広域連携」と、コトバの上では自治体の枠をなくしたつもりでも、現実には枠が存在します。

ズーラに関わっている職員の多くが、「出身母体の自治体」からの要求=結果を出すことへのプレッシャーを感じています。地域の中には、依然としてしがらみがあります。

この壁を超えていくには、やはりさらなる「結果」だと思っています。ズーラの活動が諏訪地域全体に浸透し、良い波及効果をもたらしていることは、皆が認めるところですから。


また、今後は、活動資金を負担いただいている観光関連組織に対しても、もっと具体的なメリットを出していかなければなりません。そのためにも、我々と観光事業者さんとの間で、互いにどこをどう努力すべきか。その役割分担がようやく整理できたところです。



定期的に、諏訪湖温泉旅館組合関係者にズーラの活動について説明(写真は、平成23年11月実施)。




そもそも我々の体験プログラムは、地域からの提案が主体です。提案の際に卸価格をご提案いただき、そこに実行委員会への手数料約1割を上乗せして販売価格としています(もちろん、適正価格がどうかも実行委員会内で検討し、必要な場合は調整しています)。

実行委員会の手数料収入は、現時点ではわずか数十万円です。


前述のように、地域から上がってくる体験プログラムは、そのままでは収益にはつながりません。言ってみれば商品の一歩手前の「素材」です。売っていくためには、その1つ1つの素材を各ターゲットに向けてカスタマイズして、“とんがった”商品にしなければならないと痛感しています。


逆に言えば、オンパクでの素材ストックがあるからこそ、商品へと磨き上げることもできるわけです。その「素材」が我々には、いま、200~300はあります。


今年度は、プログラムの公募事業を一旦休もうと考えています。地域の人たち自らが地域資源を発見して、プログラムをつくることで地域の見方や資源の捉え方が変わる、住民自身が楽しむといった第一段階はすでに十分な効果が出ています。そこで、次のステップとして、公募にかけていたスタッフのエネルギーを、もっとお客さまの目線でプログラムをカスタマイズし深化させる方向に向けていきます。プログラムの成功=旅館の皆さんの収益増にするためには、次のようにお客さまをセグメントで分けたアプローチを展開していいきます。


①個人のお客さまへの対応:「隙間時間に簡単に体験できる」商品を揃える


②団体のお客さまへの対応:希望のプログラムをジャンル別に分けて、受注後の手配まで滞りなく行う


③教育旅行への対応:受付・受け入れ態勢を整える


我々の活動の評価は、プログラムの販売収益だけで測れるものではないと考えています。

たとえば、あるプログラムの購入者が宿泊した場合、商品の販売額だけでなく、宿泊費・交通費・飲食費・お土産等のおカネが地域に落ちます。また、メディアに登場した場合の広報効果(広告費換算)、これまでまちづくり等の活動に係わらなかった方々が参加し、新しい商品やサービスの開発につながったといった波及効果もあります。平成25年度は、これらを、定性・定量的に整理して検証することも、当実行委員会の業務として行う予定です。


そして、この活動を介して構築された仕組みや考え方を、地域内の他組織や他活動へ反映させることで、地域全体のレベルアップを図っていきたいと思っています。



イーラ(長野県飯島町周辺地域でオンパク事業推進のためにできた組織)へのハンズオン支援の様子。





将来ビジョン


最近では、「どうすればズーラのスタッフになれますか?」と、地域住民から尋ねられるようになり、ボランティアスタッフも公募し、若い人材も入ってきました。

しかし、いまは未だ専従スタッフは、パート1名であり、その他大勢のボランティアスタッフのマンパワーに頼っているのが現状です。中核となる人材の教育・登用についても今後考えていかなければなりません。


我々にとっては、ズーラそのものが収益体になることが目的ではありません。収益を出すだけであれば民間のほうが得意です。彼らが「儲けが出ない」と手を出さない事業を、行政がうまくやれるのか?


ズーラは、地域が潤う仕組みです。ですから、きちんとした理屈があり明確な指標に則した効果さえ見えれば、税金で住民が応援する組織というものがあってもいいのではないかと考えています。


将来的には、ズーラの「住民と観光業・観光行政の間をつなぐ」観光PFとしての機能をベースに、観光協会の統合・法人化も視野に入れつつ、その一部分としてオンパク事業が成立していくようなことを思い描いています。




【組織概要】

信州諏訪温泉泊覧会ズーラ実行委員会

長野県諏訪市高島1-22-30

諏訪市役所経済部観光課内

TEL  0266-52-4141 FAX  0266-58-1844

URL http://zoola.jp/

 



平成21年6月29日設立

事務局員数:1名(諏訪地域観光連絡協議会所属パート)、ボランティアスタッフ約40名


主な事業

●諏訪地域の資源を活用した体験型プログラムの企画・実施

●上記に関わる人材育成と情報発信

●オンパクノウハウ移転に関する事業

●その他、諏訪地域の観光振興及び地域の活性化に資する事業

 

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