第11回 株式会社 御祓川(能登旨美オンパクうまみん実行委員会事務局)

2013 年 4 月 24 日


第11回は、1999年、石川県七尾市で地域の有志が出資して立ち上げた民間のまちづくり会社、「(株)御祓川(みそぎがわ)」です。
地域の文化的なシンボルであった御祓川の再生を基軸に、川を通してまちと人と暮らしを創造する多彩な活動を続けてきました。2007年の能登地震をきっかけに、事業範囲を能登地域全体へと広げ、地域資源の掘り起こしとその商品化を通して人材を育成するオンパク「能登旨美オンパクうまみん」(以下、「うまみん」)にも取組み始めました。
近年、さらに多様多種になってきたまちづくりの主体を、状況に応じてコーディネート、プロデュースしてきた同社は、現在、「うまみん」で観光分野にも軸足を置きつつ、能登地域全体のプラットフォームを模索しています。同社社長の森山奈美さんが紹介します。

 




地域の概況およびプラットフォーム(DMO)の動きが出てきた背景


当社設立のきっかけは、1985年頃に始まった「七尾マリンシティ」運動でした。当時、政治的にも経済的にも非常に落ち込んでいた七尾市を、「海・港」から「まち・経済・市民意識」を再生する構想で、港の拠点「能登食祭市場」と駅前の商業ビルを整備し、中心商店街に面的な賑わいを広げる狙いがありました。しかし、まさに2拠点を結ぶように流れている御祓川は、その美しい名前からは想像できないほどに汚染が進み、まずはこの再生が七尾市のまちづくりには不可欠でした。

 


1998年、中心市街地活性化法がスタートし、七尾街づくりセンター(株)(全国2番目のTMO認定)が設立されました。私はこのTMO構想立案にコンサルタントとして関わっていましたが、折しも、このTMO構想の「まつり文化を基本とした『あかり・かおり・かざり』」をテーマとした民間まちづくり会社を創ろうという動きが、七尾マリンシティ運動の当初からのメンバーを中心に出てきました。

 


1999年、御祓川を再生し、川からまちを考え、川沿いのまちをプロデュースしていく民間まちづくり会社(株)御祓川が誕生しました。出資額は、主体性を持って出資者全員が腹を据えて取り組むために1人500万円以上とし、出資者8名資本金5000万円でスタート(現在は、出資者19名、資本金6800万円)。事業は、補助金頼りのハード型のまちづくり事業ではなく、できる範囲でのソフト事業から取り組むことを基本としました。

 


2007年3月25日、M6.9の地震が能登半島を襲いました(能登半島地震)。七尾市も人的、あるいは家屋損壊などの被害が発生しました。この地震からの復興に向けた動きの中で、能登全体でまちづくりに携わる人々が頻繁に問題点を話し合う機会も増えていきました。その結果、能登が長年抱えてきたさまざまな地域課題が一気に顕在化しました。「何とかしなければ」という機運が高まっていました。

 


この年、社長に就任した私は、改めて「まちづくり会社」としての当社の存在意義を問い直しました。キーワードは、「川沿いから能登へ」です。能登全体という広域エリアを対象に、事業範囲を段階的に拡大し、地域活性化を目標にした戦略を構築しました。

 


同時に、能登の地域資源の見直しに、また地域課題の解決手法として着目したのが、大分県別府市で始まったオンパクです。地震発生3カ月後の6月には市民有志による実行委員会を組織し、8月、「能登旨美オンパクうまみん」(以下、うまみん)の前身である第1回「能登の旨美フェスタ」を開催しました(事務局:市役所)。その後は毎年開催を続け、第4回以降は、当社が事務局を務めています。

 


これまで川沿いのまちづくりを独自に進めてきた当社でしたが、震災復興をよりスピード感を持って進めていくためには、圧倒的に担い手不足の状況でした。もともと観光事業者ではない当社が「うまみん」の事務局を引き受けたのは、この取り組みが「地域づくりの担い手育成」につながると確信したからでもあります。

 

 




組織のコンセプト


(1)(株)御祓川のコンセプト


「小さな世界都市・七尾」の実現です。


「うまみん」を始め、地域を元気にする活動を支えるさまざまな仕組みを提供し、地域づくりの担い手の伴走者として、パートナーの活動を多岐にわたって支えています。

 



(2)「うまみん」のコンセプト


「能登の可能性に挑戦する場」です。


現在、能登半島地震復興基金からの支援を受けて、年に2回の「うまみん」を開催しています。プログラム人気アンケートの実施やパートナー研修などを通じて、地域資源を活かした新しいチャレンジを支えています。

 




事業内容、将来ビジョン


(1)(株)御祓川の事業内容


「マチ・ミセ・ヒトの関係を再生する」の3つの柱で整理されます。


①まち育て:「御祓川の浄化」=川の水質改善(御祓川浄化研究会、「うまみん」 など)


②みせ育て:「界隈の賑わい創出」=川沿いに質の高い店をつくり、街の側から川を再生、店を通して人々の賑わいを創り出す(川沿いの出店プロデュース、「能登スタイルストア」の運営、商品開発 など)


③ひと育て:「コミュニティ再生」=川のことを思い、まちのことを思いながら行動する人々のつながりをつくっていく(研修事業、能登留学=インターンマッチ など)




御祓川の水質改善活動




「能登スタイルストア」は、能登地震以降徐々に増えていった「能登の産品を送ってほしい」という各地からの声に呼応して始まった官民合同の「能登半島全国発信プロジェクト」の一環です。当社は、このうち、能登の産品を販売するネットショップ「能登スタイルストア」の運営を受託したことがきっかけで、民営化した現在も、能登全域から約80事業者、約500アイテムを扱っており、「みせ育て」の事業に位置づけています。

 


また、これまでに、地域資源を活かして、能登の事業者を当社がコーディネートしたバレンタインのオリジナルスイーツや能登の赤なまこ石けんなどを開発し、各商品の販路開拓や販売促進を実施してきました。「うまみん」のパートナーが能登スタイルストアの出品者となったり、その逆で商品の取り扱いをきっかけに、「うまみん」へのプログラム提供につながったりと、これらの事業は連動しています。




コラーゲン豊富な最高級の赤なまこのエキスを抽出して配合した、オリジナル高級石鹸。売れに売れている。




能登の地域課題の中でも、もう1つの大きな悩みが「若者がいない」ことでした。仕事がないので若者が帰ってこないという状況は、長年、言われてきたことでした。そこで、「ひと育て」の新規事業として、2010年度より、実践型インターンのマッチング事業「能登留学」に本格的に取り組み始めています。

 


能登の企業や地域のイノベーションの現場に、最低3ヶ月間(長い場合は1年間)、大学生を中心とした若者たちにインターンで入ってもらいます。そうして、共に能登の地域課題や企業課題の解決にあたるのです。同時に、起業家精神を持った人財を育てていくことによって、元気な能登を実現することが狙いです。これまでに24名(短期を含めると約100名)のインターン生が、能登をフィールドに様々なチャレンジを展開し、それぞれのプロジェクトで成果を挙げています。

 



(2)「うまみん」の事業内容


地域の資源を活かした楽しいプログラムを一定期間に多数開催し、統一したコンセプトで情報発信を図ることによって、地域の中の小さな挑戦をつないで育てていくのが、「オンパク方式」のまちづくりです。第1回の「うまみん」では、7つのプログラムを掲載した統一ガイドブックを配布するところからスタートしました。一度は、1回の「うまみん」開催につき、50~70のプログラムを提供するまでになりましたが、一方で、プログラムを運営するパートナーへのフォロー体制が弱くなってしまいました。

 


そこで、2011年度からは、ぐっとプログラム数を絞って、パートナーのチャレンジを支えることを主眼に、取り組んできました。最近は、20プログラム前後で推移しています。




ケロンの小さな村の米粉ピザづくり体験




プログラムの担い手を掘り起こし、地域資源を組み合わせてつくり上げた魅力的なプログラムを、ターゲットを絞った的確なPRで情報発信しています。「うまみん」は、地域資源を活用した新事業のテストマーケティングを行うチャレンジの場であり、一過性のイベントではありません。元気な能登を育てていくための、楽しいプロセスなのです。


ここ数年、新しいパートナーから「うまみん」に参画したいという問い合わせを受けるようになりました。住民が地域資源を活かして一歩を踏み出すための「場」づくりが、少しずつできていると感じています。




すし王国七尾のS級グルメツアー




また、「うまみん」事務局に前述の「能登留学」からインターン生を迎え入れることで、ますますチャレンジの場としての位置づけをより明確にすることができました。「うまみん」で提供してみたプログラムをパートナーが独自で開催したり、他の催しでプログラムの提供を求められたり、あるいは常時提供できるプログラムになっているものもあります。


将来は、ここからさまざまなユニークでおもしろいスモールビジネスが次々と生まれてくるようになればと思っています。

 




行政との関係について


現在、「うまみん」の活動は、能登半島地震復興基金によって支えられており、石川県への事業計画の提出と実績報告は年度ごとに行なっています。


能登空港の利用促進を担う、県の空港企画課では、「うまみん」の取り組みを首都圏から飛行機に乗って能登に誘客するための素材として捉えているようです。今後、具体的な連携につながればと私たちも期待するところです。

 


立ち上げ当初は、七尾市役所内に事務局があり、実行委員会の構成員にも市職員が入っていました。市役所からは現在も「うまみん」開催の際の後援や、広報での協力をいただいています。また、たとえば商品開発に関する勉強会を市と協働で実施したり、その受講生が試作品をお客さまに提供する場として「うまみん」を活用したり、という形で市の各部署と関わってきています。

 


地域内にチャレンジを生み出していく仕組みとしての「うまみん」の意義を、行政と共有し、地域づくりのプラットフォームとして活用していくことができれば理想なのですが、正直なところ、現実はまだまだです。

 

 




組織の抱える課題および今後の展望


25年前、七尾マリンシティ運動が始まった頃に比べると、まちづくりの担い手は、主婦やサラリーマン、学生など多種多様です。また、商店街や町会などの既存組織だけではなく、さまざまなミッションを掲げたN`POが活動を展開し始めています。

 


ゆるやかな方向性を示しつつ、それぞれの活動を尊重しながら必要に応じて情報や人材をつなげ、新しい価値や活動を生み出す手助けをする新しいリーダーが、ますます重要になっています。先頭に立つというより、その活動に寄り添い、場合によっては後押しするという点で、従来のリーダーとは立ち位置が違います。


さらに、2つ以上の主体が、協働してまちづくりを進めるためには、これをコーディネートする人財が必要となります。

 


「うまみん」は、これまで能登半島地震復興基金で資金調達をしてきましたが、人件費については「うまみん」以外の事業で賄っているのが現状です。「うまみん」の専任事務局を置くことができない状態が続いています。まずは、「うまみん」の事業費の自立化を図ることが課題となっています。今後は、主催プログラムの事業化、高付加価値化なども考え、地元の着地型観光事業者とのビジネスも、視野に入れていかなければなりません。

 


とはいえ、「うまみん」事務局の人件費については、これからもしばらくは(株)御祓川の他の事業と組み合わせて捻出していく予定です。「うまみん」の開催が目的ではなく、「うまみん」開催後の本格的商品化や新サービスの創出によって、地域全体の活性化を目指します。また、「うまみん」をきっかけとして、「能登スタイルストア」や「能登留学」の受入れにつなげ、「うまみん」を継続することによって、観光地域づくりの担い手が次々と育っていくようになればと考えています。

 


ここ数年で、まちづくりに取り組む主体は実に多様化し、それはまちなかの活動だけに留まらず、中山間地や漁村での活動も生まれています。私たちは、まちづくりのテーマや内容によってふさわしい活動主体を選び、時には新たに組織化してきました。


今後の課題は、七尾全体を調整するプラットフォームを構築していくことです。現在、「うまみん」や「能登スタイルストア」は、プロジェクトを通して多くの主体がネットワークする機会となっており、ある意味、プラットフォームの役割を果たしています。たとえば、「うまみん」をプラットフォームの組織主体として、今後法人化するかどうかも含めて、これからの動きの中で検討してきます。

 


また、主体が多様化し、担い手が徐々に拡大してきたとはいえ、まだまだ一般市民の地域づくりへの巻き込みは不十分だとも感じています。そのために、今後も、当社では、民間まちづくり会社として、さまざまな主体をつなぎ・寄り添い・後押しする形で、まち育て・みせ育て・ひと育てに取り組んでいきたいと思っています。

 

 



【会社概要】

株式会社 御祓川(能登旨美オンパクうまみん実行委員会事務局)

本社 石川県七尾市鍛冶町69-3

うまみん事務局 石川県七尾市生駒町16-4

TEL 0767-54-8866 FAX 0767-53-4811

URL http://www.misogigawa.com

うまみん http://www.umamin.net/

 

1999年6月23日

従業員数:9名

 

●主な事業

((株)御祓川の事業)

●まち育て:御祓川浄化研究会、うまみん実行委員会事務局

●みせ育て:川沿いの出店プロデュース、能登スタイルストア、商品開発

●ひと育て:研修事業、能登留学(インターンマッチング)

 

(うまみん実行委員会の事業)

●うまみんの開催(年2回)

●パートナー研修&交流会

●コーディネーター研修(ジャパンオンパク研修への参加)

 

 

 

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