第12回 NPO法人atamista

2013 年 4 月 24 日


第12回で取り上げるのは、衰退の激しい大型温泉観光地の再生に、若い力と斬新な発想で取組む、静岡県熱海市の地域プロデュー ス機関「NPO法人atamista」です。

「20歳前後の時に見た、真っ暗なゴーストタウンとなった熱海の街の光景が忘れられなかった」。自分のまちへの思いを抱き続けてきた1人の青年が、東京での会社生活を辞めて、同じ思いを持った仲間たちと共に、まちづくりに乗り出しました。地域のさまざまな人たちが自ら参画し、地域を盛り上げていく「オンパク」を起爆剤に、空き不動産の貸出斡旋事業やエリア一体型のファシリティマネジメント(業務用不動産を総合的・効率的に管理する)により生み出した収益を、まちづくりへの投資を回す手法に注目が集まっています。代表理事の市来広一郎さんが紹介します。





地域の概況とプラットフォーム(DMO)の動きが出てきた背景


熱海といえば、温泉、海、山など恵まれた観光資源を持つ、東京から最も近い国内有数の温泉観光地の1つです。人口約4万人、国内で唯一の別荘税を持ち、別荘所有者は1万世帯。しかし、ピーク時には540万人以上あった宿泊客数は、現在では260万人に半減し、顧客単価の減少も重なり、売上は大幅に減少しています。


1990年第半ば、10代後半だった私は、熱海が廃墟になり寂れていく姿を見ながら、「いつかなんとかしたい」と、思い続けていました。いずれ熱海に帰ってきて何かしようと明確に意識したのは20代前半。海外をバックパッカーとして30カ国近く旅する中で、熱海の計り知れない可能性や熱海に足りないものが見えてきたのです。同時に、東京でのライフスタイルにも疑問を持つようになりました。


「もっと新しい形の暮らし方、働き方があるのではないか」


「東京から近い熱海だからこそ、できることがあるのではないか」


2007年、20代後半のときに3年半で東京でのサラリーマン生活を辞めて、熱海に戻りました。28歳の時です。

 


当時、地元の商店や一般の市民の方々、特に、30代、40代の若手経営者の間で、将来の熱海に対する危機感が強くなっていました。


折しも、地元にUターンしていた20代後半~40歳の2人がウェブマガジンを立ち上げようとしていました。その2人と出会い、すぐさまそこに参画し、共に「Atami-navi」を始動させ、地域のさまざまな人たちの元へ取材に出かけ、声を拾いました。


この取材を通して知り合った地元の農家の方々3人の協力を得て、耕作放棄地で熱海の移住者や別荘住人向けの農業体験を行う「チーム里庭」に取り組み始めました。参加者の皆さんたちが喜び感動する姿に、小さいながらも大きな手ごたえを得ることができました。


熱海は、かつての団体旅行による大量消費型の歓楽型観光地から個人客へ、また高まる二地域居住や関東圏からの移住に対するニーズへの対応といった変革を迫られていました。従来の消費型観光地でも、ベッドタウンでもない、新たな、健康・美容・医療・教育などをテーマにした「持続可能な滞在型保養地」づくりの仕組みが求められていました。


地域の、志を持った人たちや、何かやりたいけれども悶々としている人たちなど、より多くのいろいろな立場の人たちと共に地域を盛り上げ、面の広がりをつくっていくには、各人が地域資源の価値に気づき、それを掘り起こし、磨き、商品になる可能性を認識するような仕掛けが必要でした。


着目したのが、衰退大型温泉地から見事再生を果たした大分県別府市の「オンパク」(温泉泊覧会)モデルです。


2009年、熱海市、熱海市観光協会の協力を得て、第1回の熱海温泉玉手箱(オンたま)を開催。第1回目私は実行委員会の副委員長、2回目以降は実行委員会の委員長を務めました。以降、毎年開催している「オンたま」を通じ、地元の人たちが自ら挑戦し、それを応援してくれる仲間がいることで次第に前のめりになり、地域づくりに積極的に関わるようになったり、仕事にも意欲的になっていく姿を目の当たりにしてきました。「オンたま」が、さまざまなチャレンジのプラットフォームになり得ることを確信しました。


「オンたま」の参加者の多くが、地元住民です。普段、接点のない別荘の住人や移住者たちと旧住民との間に交流が生まれたり、熱海に住むこと自体が楽しいと感じる機運が生まれるなど、少しずつ、参加者、協力者の数は増大していきました。


この力を太く大きくして、地域の資源を磨き上げて、事業・サービスを創出し、その収益が地域開発の資金として循環させる方向性を持った組織が必要でした。


それまで任意団体として活動してきましたが、2010年12月、持続可能な地域開発を担う地域プロデュース機関NPO法人「atamista」が誕生しました。

 




組織のコンセプト、
活動内容、将来ビジョン


「100年後も豊かな暮らしができるまちをつくる」です。

そのために、地域から人が育ち、地域の課題を解決するための事業や活動が次々と生まれ育つような地域づくりの生態系を生み出すことを目指しています。


熱海の本質的な問題は、50年前にピークを迎えて以降長期的な衰退期にあり、ビジネスモデルや社会モデルの変革が必要であるにもかかわらず、従来のモデルを継続していることにあります。


そうした中で次世代のまちづくりを行うためには、熱海のまちの本質的な問題を解決する、次の3つの事業が必要だと考えました。

 


(1)オンたま(熱海温泉玉手箱)事業


(2)家守事業


(3)エリアファシリティマネジメント事業

 


「オンたま」で社会実験を行いながら、地域の担い手と地域のファンを発掘し、そうした人々に必要なサービスを、(2)の現代版家守事業を通して生み出していきます。

それを駆動する「基盤」や「ガソリン」となるのが、(3)のエリアファシリティマネジメント事業です。

 

「オンたま」は観光まちづくりの基盤をつくる事業として重要ですが、それだけですぐに収益に結び付けることが難しい事業でもあります。

そこで、「オンたま」でのトライアル、テストマーケティングを経て、その結果を目に見える形(ハード)に落としこんでいき、中心市街地を再生する事業が「家守」です。ハードに落とし込むことで、持続的な動きにもつながっていきます。

 

不可欠なのが、まちづくりを志す不動産オーナーの存在です。起業などチャレンジをする人たちを支援しながら、まちのコンテンツを更新していくことをオーナーと共に取り組んでいきたいと思っています。

 

地域内のファシリティマネジメントを行うことは、志のあるオーナーたちの連携を生み出します。そうして、上記のような取り組みをしていくための投資原資を生み出していかなければなりません。

 



3つの事業の具体的な内容です。

 


(1)オンたま(熱海温泉玉手箱)事業


熱海のNPOや商店・旅館などの事業者が主催する、数十の体験交流プログラムを企画支援・コーディネートし、住民・別荘住民・観光客に提供しています。これまでに延べ230種のプログラムを実施し、4000名以上が参加。初年度14だったプログラムは、第5回目の2012年度は64団体と個人の協力で73プログラムを実施するまでになりました。


また、オンたまを活用して、新商品や新規事業の開発、起業、顧客開拓なども支援しています。




オンたまプログラム(昭和レトロ散歩)

 




オンたまプログラム(昭和レトロ風景)





(2)家守(やもり)事業


人口減少、高齢化が進みシャッター街となってしまっている熱海市内の、膨大な遊休不動産ストックを活用して、歩いて暮らせるまちにしていくことを目指しています。言ってみれば、空き不動産の貸し出し斡旋事業です。空き不動産を借り上げ、リノベーションして貸し出し、収益事業にしようというものです。この現代版家守事業を担う事業体として、株式会社machimoriも立ち上げました。


その第1弾が、昨年7月上旬に、熱海の中心市街地にオープンした「CAFE RoCA」(RoCAはRenovation of Central Atamiの略)です。





空き店舗がステキなカフェ(CAFE RoCA)に生まれ変わった。





実は、カフェはずっと温めてきた構想でした。海外を放浪中、あるとき偶然入ったカフェに熱海が目指すべき方向性を見た気がしたのです。熱海に、そして現代社会に必要なのは、地域に暮らす人、そこを訪れる人など多種多様な人たちが出会い、交流し、初対面でも気軽に会話を交わす、居心地のよい空間・場です。それを熱海につくりたいと思ったのです。


(3)エリアファシリティマネジメント事業


地域内の複数の不動産オーナーと、複数物件をまとめて管理して、メンテナンスコストを低く抑え、削減できた分をまちづくりの活動資金を生み出す(ビルのオーナーとまちづくり会社とで分け合う)事業です。実際、私たちのコンサルティングにより、これまでに5社10台のエレベーターのメンテナンスコストを削減しています。削減額から生じる利益を毎月、不動産オーナーとまちづくり会社(株式会社machimori)でシェアしています。


おかげさまでatamistaの趣旨や活動に共感してくださるオーナーさんたちは、さらに増えています。

 




行政との関係


設立当初から、熱海市や熱海市観光協会と協働で進めてきています。


「オンたま」については、atamista、熱海市、熱海市観光協会との協働運営で、顧客窓口は熱海市観光協会が、全体のプロデュース、マネジメントはatamistaが担っています。

 




組織の抱える課題と今後の展望


「オンたま」で実施する体験交流プログラムから、本格的なツアーや物産開発、店舗やオフィスの開業・起業へとつなげていくことがこれからの課題です。


また今後は、ゲストハウスなどの滞在型の宿泊施設の提供や、古い物件の不動産を仲介したり、体験交流プログラムなどのソフトサービスを提供し、店舗の誘致や、店舗の創業支援などを事業開発していく計画です。


それらを通して、熱海の中心市街地を(都会の人にとっても)「クリエイティブな30代のサードプレイス(第三の居場所)」としていくことを目指しています。


さらには、中心市街地の開発と郊外エリアへのツアー企画を連動させることで、熱海での滞在、居住の満足度を高めるべく活動を発展させていきたいと考えています。





【組織概要】

NPO法人atamista

熱海市銀座町10−19

あたみシール会館1F CAFÉ RoCA内

TEL  0557-52-4345

FAX 0557-52-4531

URL  http://atamsita.com

 

2010年12月2日設立

事務局員数:5名(専従1名、長期インターン3名)

主な事業

●家守事業

・遊休不動産を活用して、まちに新しいコンテンツをつくり出すことで、エリアを再生。

●熱海温泉玉手箱(オンたま)事業

・熱海における地域資源を活かした体験ツアーを実施。熱海市観光協会、熱海市と協働で運営。

● マーケティング・プロモーション事業

・地域のパートナーと協働しての地域資源を活かした商品開発の支援

・地域商品のプロモーション・販売

● コンサルティング事業

・営利・非営利事業者や他地域のまちづくり団体の事業課題の解決支援

 

こんにちは ゲスト さん

ID とパスワードが正しくありません。
ID
PASS
全国地域オペレーター創造ネットワークとは?
全国地域オペレーター創造ネットワーク

「観光地域づくりプラットフォーム」をはじめ、補助金依存からの脱皮に挑戦する「観光協会」など、観光地域づくりの中核組織の発展をとおして、わが国の観光による地域活性化に寄与することを目的とします。(詳細はこちら)



地域会員としてご登録ください。
会員登録

観光地域づくりプラットフォーム推進機構の会員としてご登録ください。中央省庁の施策やそれにともなう補助金情報、および観光マーケティングやブランドマネジメント・地域資源活用といった経営に役立つ情報をご提供します。また会員間での情報交換を促進し、各地での先進的な取り組みや成功事例などもご紹介します。なお、会員登録をされた場合はメルマガ登録は不要です。

賛同者としてご登録ください。
メルマガ

観光地域づくりに役立つ各種情報をお届けします。

メルマガ登録はこちら